武術創造 DIY・AI研究所
武術創造 DIY・AI研究所 BUJUTSU-CREATION-DIY-AI LAB

第4話

倉庫の哲学者たち:レールを外れた先で見つけた「別の答え」

さて、第4回です。真冬の埼玉、インフラ皆無の倉庫生活。 最悪の状況ではありましたが、実を言うと、そこで私の価値観は一度コテンパンにぶっ壊されました。それは、ある意味で「良かったこと」でもあったんです。

その倉庫の周りには、私と同じように、あるいは自ら進んでその境遇を選んでいる人たちが何人かいました。「新聞の臨時配達員」と呼ばれるプロフェッショナルたちです。

彼らは正規の配達員が休んだ時に代わりを務める、いわば助っ人。エリアを問わず完璧に配り切る腕を持ち、待遇も正規よりいい。でも、普段は働かない。住む場所も、私と同じようなインフラのない倉庫の2階だったりするんですが、彼らはそれを何とも思っていないんです。

「一番良くないのはストレスだよ。住む場所や相手を選ぶのが、一番大事なんだ」

彼らはそう言いました。世の中にはいろんな健康法があるけれど、そんなものより「ストレスを溜めない生き方」が最強なんだと。

大学へ行って、レールに乗って、必死にお金を稼いで……それが正解だと思っていた私にとって、彼らの生き様は対極にありました。 「生きるために必要な分だけあればいいじゃないか」 今ならよく分かります。足るを知る、ということです。

自然界の動物を見てください。彼らは生きるために死に物狂いで食事を獲りますが、必要以上に他人の分まで奪おうとはしません。人間だけが、自分の取り分があるのに、さらに他人の分まで欲しがって争いを起こす。

倉庫の彼らは、それを分かった上で、あえてその「不自由な自由」を選んでいた。 そんな彼らに連れ回された2週間は、今までの学校生活では絶対に出会えなかった「違う世界」との遭遇でした。

勉強して、良い成績をとって、社会のレールに乗る。そんな人たちとしか付き合ってこなかった私にとって、倉庫で出会った彼らの哲学は、後の私の人生——DIYやAI、そして武術を通じて「自分の足で立つ」ことへの、最初の種火になった気がします。

結局、この後私は一度実家へ帰ることになるのですが、この2週間の記憶は消えることはありませんでした。