「AIを導入すれば、問い合わせ対応は全部自動化できます。もう人間はいりません」
最近、そんな甘い言葉でコールセンターや事務の自動化を迫る営業マンが後を絶たないようです。 現場を17年歩いて、泥をすすりながら利益を絞り出してきた私から言わせれば、これは「効率化」なんて生易しいもんじゃない。 「現場の爆破」ですよ。
断言します。「AI丸投げ」で客対応をゼロにしようとする会社からは、真っ先に客が逃げ、その次に現場の人間が辞めていきます。
「完璧な仕組み」すら、部下は嫌がったという事実
身も蓋もない話をしましょう。 かつて私は、現場を良くしようと必死になって「仕組み」を作ったことがあります。 現場の酸いも甘いも知り尽くした私が、実務に即して、心血を注いで作り上げた「完璧なはずの仕組み」です。
ところが、現場の部下たちはそれをやりたがらなかった。 なぜか。現場には、数字や論理では測れない「呼吸」や「リズム」、そして何より「職人のプライド」があるからです。
AIの「正論」が、客の怒りに火を注ぐ
AIが得意なのは「正論」です。でも、問い合わせに来るお客様が求めているのは、冷たい「正解」だけじゃないんですよ。 「今、困っていることを察してほしい」「ちょっとした融通を利かせてほしい」。
そんな微細なニュアンスを完全に無視して、AIがマニュアル通りの「正しいだけの回答」を繰り返したらどうなるか。 火に油を注ぐだけです。お客様はさらに激昂し、その火消しに走り回らされるのは、AIを売った営業マンではなく、残された現場の人間なんです。
「楽になる」と「サボる」を履き違えてはいけない
AIに丸投げするということは、現場から「お客様の声」という生命線を奪うということです。 何に困り、何に怒っているのか。それを肌で感じなくなった会社に、成長なんてありません。
「楽になる」ことと「思考をサボる」ことを履き違えた経営判断は、必ず組織を腐らせます。 問い合わせをゼロにするのが目的ですか? 違いますよね。 お客様を満足させ、現場をスムーズに回して、利益を出すのが目的のはずです。
AIは「代わりにやってくれる魔法」じゃない。 現場の人間が、より良い判断を下すための「道具」でなきゃいけないんです。
400万、500万かけて「人間を排除する仕組み」を作る暇があるなら、まずは現場の人間が1分でも長くお客様と向き合えるように、ゴミみたいな入力作業を一つ消してあげる。
そこから始めるのが、商売の「筋」ってもんです。 部下がやりたがらない仕組みをAIという名前に変えて押し付けるのは、もうやめにしましょう。
